野菜が壊れる (集英社新書 469B)
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野菜が壊れる (集英社新書 469B)
新留 勝行

定価: ¥ 735
おすすめ度:

発売日: 2008-11-14
発売元: 集英社
食を見直すきっかけになる本
日本の農業が戦後の経済成長期に化学肥料にどっぷり浸かり、その結果農地が疲弊し、農産物が、そして家畜が、最終的にわれわれ人間の健康が破壊されていることを詳しく書かれている本であると思う。
では、今後どうすべきか。有機農業も困難さがあると言い、最後の章で著者は「電子」がカギとしているが、その具体的な内容は要領を得ない。
化学肥料の弊害をこれでもかと説いたのだから、有機農業や自然栽培農業を推奨するのかと思った読者には肩透かしであろう。
しかし、本書の前半、戦後の化学肥料生産の事情と、国政と密接に連携した農協による農家への管理体制についての記述は圧巻である。
改めて自分の食生活、特に農産物の食材について見直すよいきっかけになった。
ウソが多すぎる
冒頭に 野菜のビタミンCや鉄分が極端に減っている という話があり、著者の思いが 興味を引く情報によって 説得力を持って読者に伝えられる。
比較的うまく書かれた本だが、実は大変に問題がある。
著者の思い込みが先にあって、それに基礎知識の不足と付け焼刃の情報が積み重なった結果だろうが、何分 間違いが多すぎる。
虚偽は、窒素肥料によってケイ酸が酸素とケイ素に分解されるとか、おなじ窒素でも有機由来と化学肥料由来とは異なるとか、吸収された硫酸イオンが野菜の葉を焼くとか、ぴりぴり味のメロンはカリウムの影響だとか、化学肥料が根毛を焼くとか、水素イオンが蒸発するとか、タバコ栽培に塩化カリウムを使うとか、かわいらしい間違いから、ノーベル賞級の超トンデモ説まで、枚挙にいとまがない。
為にする著作と思いたくはないが、著者が「電子イオン水生成装置」や「電子有機肥料」を販売する経営者であることを知ると、作為をかんぐらざるをえない。
著者の、書かずにはいられない気持ちを感じて欲しい
少しアンテナの敏感な人であれば、日本の食糧行政、特に農業が致命的に道を誤っている事をうすうす感じていたと思う。
この本を読むと、その漠然とした不安が確実に形をもち、暗澹たる焦燥感に変わっていくだろう。
悲観的に捉えれば絶望的とも言えそうな内容が、十分な説得力を持って頁を埋めている。
ただ、この著者は絶望してもいないし諦めてもいないのだ。
この本には、ノンフィクションライターの告発本などにありがちなヤマっ気たっぷりの過剰演出などは微塵もない。
あるのは人間への不断の信頼と大地の摂理への畏敬の念。
土と共に生きてきた著者の、農業への愛情と読者への誠実さが行間から溢れている。
すべての日本人が知っておくべき事実が公平で冷静な筆致で綴られ、センセーショナルな内容に反して読後感が不思議なほど温かい。
一人でも多くの人に、このような本の存在を知って欲しいと思う。
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